「起業家のマナー」シリーズ、今回は第15回です。受講するときのマナーとして、脳の思い込みについてお話しします。
学校で勉強してきた中で、記憶に残った授業と、残らなかった授業があると思います。その違いは何だったでしょうか。
- 「これ、知ってます」と思った瞬間に、脳で起きていること
- 先生が100を出しても、受け取れる量が10に減ってしまう理由
- 学びの吸収量を増やすために、自分に立てるべき問い
記憶に残るのは「初めて聞く話」
記憶に残る授業は、初めて聞く話です。
初めてだから「面白いな」と興味を持って聞ける。好奇心を持ちながら聞くと、脳にすっと入ってきます。
では、一度聞いた話をもう一度されたらどうでしょう。
「あ、これ聞いたことある」「もうオチが分かってる」。この感動のない感じ、ありますよね。
映画もそうです。初めて観るときは面白いのに、2回目はちょっと興奮が減る。
私はマンガやアニメが結構好きなのですが、やはり1回目のワクワク感は格別です。2回目も楽しいけれど、1回目ほどではありません。
人間は、「もう分かっている」と思った瞬間に、興味関心がなくなり、エネルギーが下がる。そして、感動も記憶も脳に残りにくくなるんです。
「これ、知ってます」は最悪の一言

ビジネスの場面、とくに講座を受講しているときに、「これ、知ってます」は最悪です。
あなたがそう言った瞬間、説明する側は説明する気が失せます。
そして聞く側のあなたは、「前に聞いたやつだ」と省エネモードに入ります。脳が前の記憶を引っ張り出してきて、新しい話を入れなくなるんです。
「同じことだ」と思った瞬間、先生の言っていることが入らなくなる。仮に違うことを言っていたとしても、もう入ってきません。
しかも、前に習ったことをちょっと思い出して、分かった気になって終わる。

分かった気になっているだけで、できているかどうかは別問題なんです。
先生の「あなたに必要だ」が、パーになる
先生は、「あなたはここができていないな」「これはあなたに必要だな」と思って伝えてくれています。
それなのに、受け取る側が「それ、知ってます」と言った瞬間、すべてがパーになります。
もう本当に、生産性はそこで終わりです。残念でしかない。
この脳の特性を知ってもらえたら、「それ知ってる」と思うことが、どれだけ非効率なものを生み出すかが分かると思います。
同じ話でも、違う人から聞けば違うものが得られる

だから、「知ってます」は絶対に言わないでください。
先生は、じつは違う話をするかもしれません。
同じ話だったとしても、違う人から聞けば、違う情報が得られます。そして、自分に対して違うインパクトがあるんです。
「もしかしたら、何か違うところがあるのかな」
「もっと学べるかもしれない」
そう思って、あえて自分の脳をコントロールして、聞く姿勢をつくる。
受け取れるものを増やしていくのは、受講生の側の責任です。

聞く姿勢は、自分でつくれるんです。
100のうち、受け取れるのは最大80
私も、先生から学ぶときは、先生が出してくれる100を受け取る努力をしています。
でも、そもそも100を受け取るのは無理なんです。先生のほうが器が大きいので、こちらはマックスでも80くらいしか受け取れない。
そこで「もう知ってます」と言った瞬間、その80が10くらいに減ってしまうんです。

たくさん与えてもらっているのに、ほとんど受け取れない。もったいないですよね。
「私はできてるんですけど」も受け取り拒否

「知ってます」と同じくらい危ないのが、「私はできてます」です。第11回でもお話ししましたが、成長を妨げる魔法の言葉です。
できていない人に限って、「私はできてます」と言うんですよね。
たとえば、彩郁(saya)さんが「旦那さんを愛しましょう。大切にしましょう。成長を見届けましょう」とお話ししたときのこと。
こう返してくる方がいるんです。「私はできているんですけど、旦那は器が小さいから」「私はできてるんですけど、旦那は全然努力しない人だから」。
いや、違うんです。それを言っている時点で、受け取り拒否なんです。
本当にできている人は、そうは言いません。「なるほどね」としみじみ感じながら、「もっと自分にできることはないかな」と、自然に受け取っています。
そして面白いことに、この話をすると「そうですよね、私はできてるんですけど、できていない人っていますよね」と言う人がいる。その方こそ、できていません。
言葉が入りにくい人がいるのも、自然なこと
これは、別の問題が絡んでいることもあります。
プライドを大切にするステージにいらっしゃる方や、自己重要感を満たしたいという欲が強い方。そういうケースでは、どうしても言葉が入りにくいんです。
それ自体を責めるつもりはありません。誰もが通る道です。

私自身も、通ってきた道ですから。
ただ、そこに気づいて、自分から聞く姿勢を変えられる人が、一歩先に進んでいきます。
おわりに ── 自分に問いを立てながら聞く

「自分は分かっている」「自分はできている」ではなく、自分の中にこんな問いを立てながら聞いてみてください。
- 「ここから、何か学べるはずだ」
- 「自分がもっと良くなるには、どうしたらいいだろうか」
問いを持って聞くだけで、同じ話からでも受け取れるものが、まったく変わります。
同じセミナーに参加して、同じ話を聞いても、一年後に大きく変わる人と、何も変わらない人がいます。
その差は、話の内容ではなく、聞くときに自分に立てていた問いの差なんです。
繊細な人は、もともと「問いを探す力」を持っています。人の気持ちに敏感だからこそ、相手の言葉の奥にある意図にも気づける。
その力を、学ぶ場面でもぜひ使ってください。

受け取る力は、あなたが育てられる才能です。
それではまた、次回のコラムで。
※本コラムは、YouTubeで公開された動画「98.起業家のマナー15」の内容を、読み物として再編集したものです。






